USテキサス/ヒューストンのエモ/インディーロックバンド「HEW」によるデビューアルバム“Your Version”が2026年、TINE ENGINESよりリリース。FOOTBALL, ETC.のLindsay Minton(Guitar/Vocal)とMercy Harper(Bass VI)が2024年に結成し、Amador “Moe” Lerma(Drums)、Kris Hoffman(Bass)を加えた4人編成。LindsayとMercyという中核メンバーを共有するだけにFOOTBALL, ETC.との繋がりは当然感じさせますが、単なる別名義やその延長線ではなく、明確に異なるバンドとしてのサウンドを構築しています。FOOTBALL, ETC.がクリーンなギターのアルペジオや余白を活かし、Lindsayの歌を中心に据えた繊細で内省的なエモを鳴らしていたのに対し、HEWでは4人のアンサンブルそのものが前面へ。最大の特徴となる通常のBassとBass VIによる2本の低音楽器が、単純に音の厚みを作るのではなく、一方がボトムを支えればもう一方がギターのような旋律へ回り、ときには互いに引っ張り合うように交錯。その上を鋭角的なギターが切り込み、タイトなドラムが楽曲を強く押し進めることで、FOOTBALL, ETC.よりも重心が低く、硬質で緊張感を孕んだバンドサウンドへと変化しています。とはいえLindsay Mintonならではの耳に残るメロディーや、静かなパートから一気に視界が開ける瞬間の美しさは健在。繊細さを削ぎ落としてラウドになったという単純な変化ではなく、FOOTBALL, ETC.ではギターとヴォーカルの隙間に存在していた緊張感を、HEWではリズムと低音を含めたバンド全体で表現しているような感覚。Bass/Bass VIが生み出す独特の奥行きと低音のうねりによって楽曲にはさらに立体感が加わり、抑制と爆発の振り幅も拡大。大きく開けるメロディーフックを持ちながら、アンサンブルはよりタイトかつ意図的に組み立てられています。歌詞では家族関係の亀裂や記憶、その出来事そのものと自分の中に残された意味とのズレを掘り下げ、コントロールと崩壊、信じることと疑うこと、過去と現在といった相反する感情の間を行き来。それらを綺麗に解決するのではなく、矛盾を矛盾のまま抱え込み、何度も角度を変えて見つめ直していくようなLindsayのヴォーカルも、HEWの張り詰めたサウンドによく似合っています。感情を必要以上に爆発させず、むしろ抑え込むことでその強度を増幅させていく歌と演奏も非常に印象的。90'S〜00'Sのエモ/インディーロックの語彙を確実に持ちながら、特定の時代の音を再現するエモリバイバルには向かわないのもHEWの面白いところ。変則的に絡み合うBass/Bass VI、鋭角的なギターワーク、抑制された演奏から突然現れる大きなメロディーフックと、各メンバーの役割が明確だからこそ生まれる独特なダイナミズムがあります。エモという出自を隠すことなく、それを現代的なインディーロックとして鳴らしているところも本作の大きな魅力。FOOTBALL, ETC.が持っていた瑞々しく繊細な感情の揺らぎを引き継ぎながら、それをより低く、太く、複雑なアンサンブルへと組み替えたHEW。過去のキャリアを下敷きにしつつもそこへ寄り掛かることなく、現在進行形のUSエモ/インディーロックとして新しい輪郭を獲得しています。FOOTBALL, ETC.のファンはもちろん、エモをルーツに持ちながらインディーロックとして抜群のポップセンスを鳴らすSNAIL MAILやRATBOYS、さらにLEMURIA、TIGERS JAW、SWEET PILLあたりが好きな方にも大推薦。