【廃盤】エモを出発点に、ポストロック、エクスペリメンタル、電子音楽、フォークまでを飲み込みながら大胆な音楽探求を続けた、ex-CAP'N JAZZのTim Kinsella率いる「JOAN OF ARC」が2009年にPOLYVINYLよりリリースしたアルバム“Flowers”。90年代シカゴエモの最重要人物のひとりであるTim Kinsellaが、いわゆる「エモ」という枠組みから最も遠くまで踏み込んだJOAN OF ARCならではの実験精神が凝縮された一枚。断片的なギターフレーズ、アコースティックな響き、電子音、ノイズ、反復、突如切り替わるリズムや空間処理がコラージュのように配置され、一般的なロックバンドの構造を意図的に崩しながら独自の楽曲世界を作り上げています。一聴すると散漫で掴みどころがないようでいて、聴き進めるほどに浮かび上がってくるのが、JOAN OF ARC特有の繊細なギターアンサンブルとTimの奇妙に親密な歌声。CAP'N JAZZから受け継がれる不規則なフレーズや感情の揺らぎを残しながら、それを激情や爆発力ではなく、音響、余白、反復、偶然性へと置き換えたようなサウンドが非常にユニークです。90年代のシカゴエモからOWLS、MAKE BELIEVEへと連なるKinsella周辺の音楽性はもちろん、GASTR DEL SOLやTORTOISEなどシカゴ音響派〜ポストロックの実験性とも自然に接続。美しいアコースティックギターが鳴っていたかと思えば、次の瞬間には奇妙な電子音やノイズが侵入してくる、その予測不能さこそJOAN OF ARCの醍醐味です。CAP'N JAZZの衝動を期待すると完全に肩透かしを食らう作品ですが、その衝動を解体し、再構築し続けた先にあるのが本作。エモという音楽が持っていた自由さやDIY精神を、全く別の方法論で突き詰めたJOAN OF ARCらしい異形のポストロック/クスペリメンタル作品です。
CONDITION
MEDIA : NM
SLEEVE : VG+