SLOWDIVEが”Pygmalion”を完成させた頃、バンドはすでに終焉へ向かっていました。残されたのは、Neil Halstead、Rachel Goswell、そして新たに加入したドラマー Ian McCutcheonの3人。Pygmalion制作と並行して、NeilはLeonard Cohen、Nick Drake、Townes Van Zandt、Gram Parsonsらに影響を受け、静かなアコースティック曲を書き始めます。それはアンビエントへと向かったPygmalionとは対照的な、より「歌」を中心に据えた音楽でした。CREATIONとの契約終了、そしてSLOWDIVE解散後、そのデモを聴いた4ADのIvo Watts-Russellに見出され、彼らはMOJAVE 3として新たなスタートを切ることになります。
”Ask Me Tomorrow”を単なるSLOWDIVE解散後の1stアルバムと捉えるのは、この作品の本質を見誤っているかもしれません。本作は、Neil Halsteadがシューゲイズという手法から一歩距離を置き、ソングライターとしての才能をより純粋な形で開花させた作品です。轟音のギターウォールは姿を消し、アコースティックギターやスライドギター、ブラシを用いたドラムが穏やかな風景を描き出します。しかし、音数を削ぎ落としたからといって、彼らが目指す世界まで変わったわけではありません。かつて残響やフィードバックで描いていた情景を、今度はメロディーと歌、そして楽曲そのものの余白によって表現するようになったのです。さらに本作を特徴づけるのは、90年代半ばのUSインディーやサッドコアとの共鳴です。MAZZY STARやRED HOUSE PAINTERSにも通じる静かな陰影をまといながら、そのサウンドはどこまでもイギリス的で、湿度を帯びた叙情性に満ちています。フォークやカントリーを土台としながらも懐古趣味には陥らず、ドリームポップやアンビエントを通過した者にしか鳴らせない空気感を獲得している点こそ、MOJAVE 3最大の魅力と言えるでしょう。本作はSLOWDIVEが轟音で描いていた夢を、木の温もりと静寂へと置き換えた作品です。だからこそ本作は、過去との決別を意味するのではなく、表現方法を変えることで新たな可能性を切り開いた記念碑的作品であり、90年代を代表するフォーク/ドリームポップ作品として、今なお色褪せることなく輝き続けています。1995年作品。