MOJAVE 3 / Puzzles Like You CD

SLOWDIVEが”Pygmalion”を完成させた頃、バンドはすでに終焉へ向かっていました。残されたのは、Neil Halstead、Rachel Goswell、そして新たに加入したドラマー Ian McCutcheonの3人。Pygmalion制作と並行して、NeilはLeonard Cohen、Nick Drake、Townes Van Zandt、Gram Parsonsらに影響を受け、静かなアコースティック曲を書き始めます。それはアンビエントへと向かったPygmalionとは対照的な、より「歌」を中心に据えた音楽でした。CREATIONとの契約終了、そしてSLOWDIVE解散後、そのデモを聴いた4ADのIvo Watts-Russellに見出され、彼らはMOJAVE 3として新たなスタートを切ることになります。

 

5thアルバム”Puzzles Like You”は、MOJAVE 3のディスコグラフィの中でも最も賛否が分かれる作品かもしれません。デビュー作”Ask Me Tomorrow”を象徴していた静寂や憂いは大きく後退し、代わって前面に現れるのは、軽快なビート、鮮やかな12弦ギター、そして60年代ポップへの憧憬です。THE BYRDSやBIG STAR、さらにはパワーポップの系譜を感じさせる楽曲は、初期作品しか知らないリスナーを驚かせるほど軽やかで開放的な響きを持っています。しかし、その変化は決して唐突なものではありません。”Out Of Tune”でフォークへ、”Excuses for Travellers”でアメリカーナへ、”Spoon and Rafter”でポップへと少しずつ表現の幅を広げてきた彼らにとって、本作はその流れを自然に突き詰めた結果でした。シューゲイズという出自に縛られることなく、「良いメロディーを書きたい」というNeil Halsteadのソングライターとしての欲求が、最もストレートな形で表れた作品とも言えるでしょう。もちろん、アルバム全体を覆う空気はこれまでとは異なります。それでも、Rachel GoswellとNeil Halsteadの穏やかなボーカルや、どこか英国らしい翳りを帯びたメロディーには、MOJAVE 3らしさがしっかりと息づいています。明るいサウンドになっても、どこか切なさが残る。その絶妙なバランスこそ、このバンドだけが持つ個性です。本作の発表後、メンバーはそれぞれソロ活動や別プロジェクトへと活動の軸を移し、MOJAVE 3は静かにその歩みを終えます。本作は、バンドの集大成というよりも、「最後だからこそ好きな音楽を自由に鳴らした」ような清々しさに満ちた作品です。過去を振り返るのではなく、最後まで前を向き続けた彼ららしい、美しく晴れやかなラストアルバムと言えるでしょう。2006年作品。

 

 

  • Label:4AD
  • Price:2,480
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