USカリフォルニアのシューゲイズバンド、「WHIRR」が2013年にGRAVEFACEから発表したEP”Around”が自身のレーベル FREE WHIRL より2026年に再発。1stアルバム”Pipe Dreams”と2ndアルバム”Sway”の間に位置し、WHIRRがそれまでのドリーミーなシューゲイズサウンドから、より重く、暗く、そして深い世界へと踏み込んだ重要作です。全4曲、約30分。ここで鳴らされる WHIRR の音楽には、急ぐという感覚がほとんどありません。ゆっくりと沈み込むリズム、長い余白、幾重にも折り重なるギターの残響。巨大な轟音を鳴らしながらも、その中心にあるのはむしろ静寂であり、音と音の間に漂う緊張感です。一音一音が時間を引き延ばすように響き、聴く者を徐々に深い音の中へと引き込んでいきます。オープニングの「Drain」から、その変化は明確です。重く引きずるようなリズムの上を巨大なギターが覆い尽くし、ヴォーカルは深い霧の向こう側から聞こえてくるかのように漂う。「Swoon」では甘美なメロディと圧倒的な音圧が溶け合い、「Keep」では静けさと轟音のコントラストがさらに鮮明に。そしてタイトル曲「Around」では、反復されるフレーズと残響がゆっくりと巨大な渦を作り上げ、時間の感覚さえ失わせていきます。シューゲイズの幻想性に、スロウコアの静寂と倦怠感、さらにドゥームにも通じる圧倒的な重量感を持ち込み、それらをWHIRR独自の感覚でひとつの音像へと融合。Around は単なるアルバム間のEPではありません。WHIRR が自らの音楽をより深く掘り下げ、その後の方向性を決定づけた転換点とも言える作品です。美しいのに息苦しく、巨大なのにどこまでも孤独。静寂と轟音の境界をゆっくりと溶かしながら、聴く者を逃げ場のない深い残響の中へと沈めていく、WHIRR のディスコグラフィーにおいても異質な存在感を放つ傑作です。