SQUIRREL BAIT / Squirrel Bait EP 12"

USケンタッキー州ルイヴィルのパンク/ハードコアバンド「SQUIRREL BAIT」によるセルフタイトルEP “Squirrel Bait EP” が2026年版リプレスとして再発。オリジナルは1985年にHOMESTEAD RECORDSからリリースされ、その後1997年にはDRAG CITY傘下DEXTER’S CIGAR(Jim O’RourkeとDavid Grubbsによるレーベル)より再発された、USポストハードコア史の起点とも言える重要作品です。今作は2026年版リプレスとなります。後にSLINT〜THE FOR CARNATIONへ進むBrian McMahan、BASTRO〜GASTR DEL SOL〜ソロワークへ展開するDavid Grubbs、さらにSLINTのBritt Walfordらが在籍していた、ルイヴィル地下シーンの原初的存在でした。後年“ポストロックの聖地”として神格化されることになるルイヴィルですが、その特異な空気感、静寂と爆発、知性と暴力性、不穏な空白感...は既にこのEPの時点で異様な形で現れています。80年代中盤、USハードコアはBLACK FLAG以降のメタル化/重厚化、HÜSKER DÜ以降のメロディック化、そしてDCハードコア以降の感情表現へと枝分かれし始めていました。そんな中、SQUIRREL BAITは単なる高速HCともスラッシュ化したクロスオーバーとも異なる、“崩壊寸前の感情”と“構造的な違和感”を同時に持ち込んだ極めて異質な存在でした。Gerard Cosloy(MATADOR RECORDS)が“screamin’ teenage psycho dilemmas”と評したように、本作には若さゆえの切迫感と神経症的テンションがむき出しの状態で封じ込められています。特に代表曲 “Kid Dynamite” は、後のエモ/ポストハードコアの原型とも言える楽曲でしょう。アンセミックなメロディーを持ちながらも、単純なシンガロングでは終わらず、軋むギターと不穏な展開、感情が制御不能寸前まで高まっていく構造は、後のSLINT “Tweez”〜“Spiderland”へ直結する異常な緊張感を既に孕んでいます。またDavid Grubbsのギターには、後のBASTRO〜GASTR DEL SOLで開花する実験性やアヴァンギャルド感覚の萌芽も色濃く表れています。さらに重要なのは、本作が単なる“SLINT以前”の資料的作品では終わらない点でしょう。RITES OF SPRINGやEMBRACE周辺の初期エモ、MINUTEMEN〜SACCHARINE TRUST周辺の西海岸ポストパンク的感覚、さらにはTHE REPLACEMENTS以降のUSインディーロック的メロディー感覚までが未分化のまま混在しており、80年代後半〜90年代US地下音楽の“分岐点”そのもののような内容になっています。実際、本作発表後にDavid GrubbsとClark JohnsonはBASTROへ、Brian McMahanとBritt WalfordはSLINTへ分岐していきます。その後の“ルイヴィル系譜”を考えると、このEPがどれほど巨大な起点だったかは改めて強調されるべきでしょう。
  • Label:DEXTER’S CIGAR
  • Price:4,580
  • Qty :