フランスのポストロック/マスロック/ノイズロックデュオ 「CHEVREUIL」 が、20年の沈黙を破り5thアルバム”Stadium”を発表。4台のアンプが生む擬似クアドラフォニック空間と生ドラムの物理的響度を基軸に、“配置と力学”によって音響を構築する独自の方法論をさらに深化させています。Steve Albini 的リアリズムを踏まえつつも逸脱、空間そのものを作曲単位とする実験性は、ポストロック/マスロックの定義そのものを更新する重要作です。
フランスのポストロック/マスロック/ノイズロックデュオ 「CHEVREUIL」 が、アルバム ”Capoëira” とEP ”Science" 以来、20年の沈黙を破って発表する5thアルバム”Stadium” がメンバーのJulien Fernandez主宰のCOMPUTER STUDENTSから2026年リリース。Tony Chauvin(ギター/アナログシンセ)と Julien Fernandez(ドラム)によるこのデュオは、1998年の結成当初から観客の中央に陣取り、4台のアンプを東西南北に配置することで生まれる立体的な音響空間でのライブパフォーマンスを披露、2人編成とは思えない密度と圧力を生み出します。その独自の手法は、かつて Steve Albini が録音を手がけたことでも知られ、その独特な表現方法を見事に音盤に刻み高い評価を得てきました。 本作は当初、COMPUTER STUDENTS による CHEVREUIL 過去作の再発プロジェクトとして構想されていましたが、15年ぶりに再び音を出した二人のあいだにかつての化学反応が蘇ったことで、新作アルバムへと発展しました。制作は初期衝動に立ち返る即興性を軸に進められ、短期間のセッションから16曲が立ち上がっています。Steve Albini死去の今、彼らは新しい録音方法を見出しました。制御されたスタジオ環境ではなく、個性の強いライブルームで収録を行い、残響や空間特性を積極的に取り込むことで、音の奥行きと立体性を構築し4台のアンプに囲まれたライブ体験を、ステレオ環境でどこまで再現できるかという試みを行いました。 ライブや過去作と同様にベースを排し、ギターを4台のアンプでドラムセットの周囲に配置することで、音が空間を循環するクアドラフォニック(4チャンネル的)なフィールドを構築しています。一方でドラムは生音のまま鳴らされ、音圧、位置、反射といった要素そのものが作曲の一部として機能し、Steve Albini が提示してきたリアリズム志向の録音美学とも異なる、より構造的で“空間そのものを作曲単位とする”独自の領域へと到達しています。さらに、活動休止期間中に試みられたシンセサイザーとギターの融合は 「マグネティックギター」 として結実し、従来の演奏概念を更新。こうした探求は単なる復帰にとどまらず、表現そのものの拡張として機能しています。加えて彼らの理念にある、オーバーダブに頼らない一発録りの方法も既作同様に継続されており、演奏、録音、空間設計が不可分に結びついた、CHEVREUIL ならではの音響体験を提示しています。 USマスロックの系譜にある DON CABALLERO、BATTLES、RUMAH SAKIT、HELLA、OXES... などと比較されることも少なくありませんが、CHEVREUIL の特異性は、それらの“リズムの解体”や“技巧性”とは異なる地点にあります。彼らの音楽は、よりヨーロッパ的なコンセプチュアリズムやサウンドインスタレーションの文脈に接続されており、楽曲という単位を超えて“空間そのものを構築する行為”へと接近しています。そのため Stadium は、ポストロック/マスロック/ノイズロックという枠組みで語り得る作品でありながら、同時にそれらを逸脱する存在でもあります。音響、構造、配置といった要素が緊密に結びついた本作は、ジャンル的快楽よりも“体験としての音楽”へとリスナーを導く、極めてユニークな作品に仕上がっています。まさにこの作品でしか体験できない、音が空間を駆動し、身体へと直接作用するような感覚――それこそが Stadium の核心であり、CHEVREUILという装置がいまなお更新され続けていることを証明しています。
フィジカル面においても大きなこだわりを見せています。このデラックス版は重量盤2枚組ヴァイナルに加え、アルミスリーヴ仕様、さらにレコーディングのセットアップやパラメーター設定といった技術的詳細をまとめたブックレットが付属します。こうした徹底した作り込みにより、本作は単なる音源にとどまらず、“体験する装置”として設計されたプロダクトに仕上がっています。
新作に合わせてインタビューを行いました。