USインディーロックを代表するDEATH CAB FOR CUTIEのBen Gibbardと、エレクトロニック・ミュージックを軸にDNTELとして活動するJimmy Tamborelloによるプロジェクト、THE POSTAL SERVICE。2003年にSUB POPからリリースされた唯一のオリジナルアルバムにして記念すべき1st『Give Up』の再発盤。2000年代インディーポップ/エレクトロポップの流れを決定づけた屈指の大名盤です。プロジェクトのきっかけは、TamborelloのDNTEL名義による2001年作『Life Is Full Of Possibilities』収録曲「(This Is) The Dream Of Evan And Chan」にGibbardがヴォーカルで参加したこと。そこで生まれた相性を発展させ、ロサンゼルスにいたTamborelloが制作したインストゥルメンタルのCD-RをシアトルのGibbardへ郵送し、Gibbardがヴォーカルや楽器を加えて送り返すという方法で楽曲を制作。この文字通りの「郵便」による遠距離レコーディングからTHE POSTAL SERVICEという名前が生まれました。細部まで緻密に組み立てられたJimmy Tamborelloの電子音、柔らかなシンセサイザー、細かく刻まれるビートやドラムマシン。そのセンシティブでドリーミーなトラックの上を、Ben Gibbardの繊細でエモーショナルな歌声と、日常の風景や人間関係の機微を捉えたリリックが漂います。電子音楽でありながら冷たく無機質になることはなく、逆にギターロック以上に人肌を感じさせる、その絶妙な距離感が本作最大の魅力。DEATH CAB FOR CUTIEで培われたGibbardの切なく親密なメロディー感覚と、Tamborelloがアンダーグラウンドなエレクトロニカで磨いてきたプログラミングが、どちらかへ寄り切ることなく絶妙なバランスで融合。IDMやエレクトロニカの細かな音響設計を、極めて普遍的なポップソングへ落とし込み、インディーロックと電子音楽の境界を自然に消してしまいました。RILO KILEYのJenny Lewisが複数曲でヴォーカルを担当し、Jen Wood、DEATH CAB FOR CUTIEのChris Wallaもゲスト参加。男女ヴォーカルの掛け合いや生楽器が電子音の隙間へ入り込むことで、アルバム全体にさらに豊かな表情を与えています。2000年代初頭、インディーロックとエレクトロニカが急速に接近していた時代に、その両者を最も自然かつポップな形で結びつけた作品のひとつ。ベッドルームで作られた電子音楽の親密さと、USインディーロック特有の切実なソングライティングが重なり、センシティブでドリーミー、それでいて抜群にキャッチーなアウトプットへと昇華されています。そしてその評価はアンダーグラウンドだけに留まらず、『Give Up』はSUB POP公式でNIRVANA『Bleach』に続く、レーベル史上2作目の100万枚突破作品として記録されています。インディーレーベル発のエレクトロニックなポップアルバムとして異例ともいえる広がりを見せ、その後のインディーポップ、エレクトロポップ、ベッドルームポップへと続く流れにも大きな影響を与えました。離れた二人がCD-Rを郵便で往復させながら作り上げたという制作方法から、ジャンルの境界を軽々と越えたサウンド、そしてNIRVANA『Bleach』に続くSUB POP史上2作目のミリオンセラーという結果まで、2000年代USインディーを象徴する物語が詰まった一枚。20年以上を経てもまったく色褪せない、USインディーポップ/エレクトロポップ史に残る大名盤です。