MINUTEMEN / Double Nickels on the Dime 2xLP

USカリフォルニア州サンペドロが生んだ80'sパンク/ハードコアの殿堂、MINUTEMENが1984年にSSTからリリースした3rdアルバム『Double Nickels On The Dime』。オリジナル同様SSTからのCD盤で、全45曲を収録。同じ1984年にSSTから発表されたBLACK FLAG『My War』、HÜSKER DÜ『Zen Arcade』と並び、ハードコアを出発点としながら、それまでのパンクが持っていた音楽的価値観を一気に外側へ押し広げた時代の金字塔です。もともとシングルLPとして制作が進んでいたものの、盟友HÜSKER DÜが大作『Zen Arcade』をダブルLPとして完成させたことに刺激を受け、さらに楽曲を書き足して2枚組へと発展。結果として生まれたのは、単純なハードコアの拡張版ではなく、「パンクなら何をやってもいい」というDIY精神をそのまま音楽へ置き換えたような、とてつもなく自由で巨大な作品でした。1〜2分前後の短い曲を中心に、パンク/ハードコアを土台としながら、ジャズ、ファンク、ブルース、フォーク、ポストパンク、実験音楽、スポークンワードなどを猛烈な速度で横断。D. Boonによる乾いた音色で鋭く切り刻むカッティングギターと政治的/社会的な視点を持つリリック、Mike Wattによるギター以上に楽曲をリードすることさえある独創的でファンキーなベース、George Hurleyによるポリリズミックで変幻自在なドラム。その3人が決められた役割に収まらず、互いの演奏へ反応し続けることで、他のどのバンドにも似ていないアンサンブルを作り上げています。D. Boonのギターは巨大なディストーションで空間を埋めるのではなく、余白を残しながら鋭いコードや単音を差し込み、Mike Wattのベースはその空間を縦横無尽に動き回る。そこへGeorge Hurleyのドラムがファンクやジャズにも通じるシンコペーションと複雑なリズムを叩き込む。ギターが主役でベースとドラムが下地を作るというロックバンドの一般的な力関係そのものを崩し、3人が対等に会話するような演奏を実現しています。さらに彼らが掲げた「We Jam Econo」という思想もMINUTEMENを理解するうえで重要。安価な機材や移動手段を使い、短い曲を次々と演奏し、自分たちで可能な範囲の活動を続ける。その徹底したDIY精神は単なる節約術ではなく、音楽を巨大な産業や既存のルールから自分たちの手へ取り戻すための姿勢そのものでした。パンクとは特定の音型や速さではなく、「自由に音楽を作るための方法」であることを、彼らはこの作品で実践しています。当時のUSハードコアがより速く、より激しくなる方向へ進んでいたなか、MINUTEMENは演奏力と知性、ユーモア、政治性、そしてあらゆる音楽への好奇心を持ち込み、その価値観自体をひっくり返しました。短く性急な曲の連続でありながら、作品全体を通して聴けば巨大な音楽地図のようにも響く。ハードコアの初期衝動と、ジャズやファンクの身体性、ポストパンクの実験精神が矛盾することなく共存しています。その影響はパンク/ハードコアだけに留まらず、RED HOT CHILI PEPPERS、PAVEMENT、UNWOUND、SEBADOHなど、その後のUSオルタナティブ/インディロックへ広く波及。90年代に爆発するオルタナティブロックが「パンクを出発点にしながら、ジャンルを横断して自分たちだけの音楽を作る」という方法論を獲得していく、その遥か以前にMINUTEMENはそれを実践していました。Rolling Stoneのパンク名盤企画でも『Double Nickels On The Dime』は最重要作品のひとつとして取り上げられ、40年以上を経た現在もその評価は揺るぎません。猛烈な情報量を43曲へ詰め込みながら、技巧を誇示するのではなく、すべてを「パンクだから自由にやる」という一点へ帰結させた作品。パンク/ハードコアの可能性と価値観そのものを書き換え、その後のオルタナティブ、インディロックへ巨大な道を開いた、USアンダーグラウンド史に永遠に残る大名盤です。
  • Label:SST
  • Price:6,980 円
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