THE PROMISE RING / Nothing Feels Good LP(BLUE)

CAP'N JAZZ解散後、Davey von Bohlenが本格的に始動させたUSウィスコンシン州ミルウォーキーのギターロックバンド、THE PROMISE RING。1997年にJADE TREEからリリースされた2ndアルバム『Nothing Feels Good』。90年代後半に「エモ」という言葉がUSインディーロックのひとつの大きな潮流として広がっていく、その中心に位置した歴史的重要作です。1996年の1st『30° Everywhere』にあった不安定であどけない演奏、CAP'N JAZZから受け継いだ性急さや感情の揺れを残しながら、本作ではソングライティングとギターポップとしての精度が一気に上昇。録音/プロデュースを手掛けたのはJ. Robbins。輪郭のはっきりしたギター、跳ねるようなリズム、歌と演奏が一体となって前へ転がっていく躍動感を捉え、バンドが持っていた青臭さを消すことなく、極めて瑞々しいギターロックへと仕上げています。Davey von Bohlenの決して完璧ではない歌声と、言葉を何度も反復しながら感情へ変えていく独特のヴォーカル。キラキラとしたギターのアルペジオ、少し歪んだコード、弾むようなベースとドラムが絡み合い、パンクの初期衝動とインディーポップの甘酸っぱいメロディーが絶妙なところで交差します。技巧や重量感ではなく、ほんの少し頼りない演奏や声、コードの響き、その瞬間の感情そのものを楽曲の魅力へ変えてしまうところにTHE PROMISE RINGの唯一無二の存在感があります。後に「90's エモ」を代表する作品として語られることになりますが、ここで鳴っている音楽にはまだジャンルとして完成された「エモ」の型がありません。パンク/ハードコアを通過した若者たちが、ギターを鳴らし、メロディーを追いかけ、自分たちの日常や感情をそのまま歌にしていく。その無防備な感覚が、結果として後続する無数のバンドにとってひとつの雛形になっていきました。『30° Everywhere』の危うさから一歩進みながら、後の作品ほど洗練されてもいない。その中間にしか存在し得なかった、不完全だからこそ眩しいサウンド。ギターポップとしてどこまでもエバーグリーンでありながら、同じものを作ろうとしても決して再現できない1997年という瞬間の空気が閉じ込められています。後に音楽ライターAndy Greenwaldが2003年に刊行したエモについての著書のタイトルとして『Nothing Feels Good』を引用したことからも、本作が90年代エモの象徴として残した存在感の大きさがうかがえます。ジャンルを代表しようとして作られたのではなく、若者4人が鳴らしたイノセントで青臭いギターロックが、結果として「エモ」という言葉のイメージそのものを形作ってしまった。90年代USインディーロック/エモを語るうえで絶対に外すことのできない、奇跡的な大名盤です。
  • Label:JADE TREE
  • Price:5,980 円
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